『座頭市と用心棒』

監督は岡本喜八パドックを見るだけでぞくぞくとしてしまう。勝新太郎三船敏郎。やはりどちらも引けをとらない大役者だった。新文芸座の意向なのか、勝新太郎映画祭の最終日をこうも暗い映画2つで締めくくったのはなぜだろうか?『座頭市と用心棒』の舞台となる村も、「座頭市シリーズ」の中でかつてなかったほど荒廃していて人間も腐りきっている。若尾文子演じる女と地蔵を彫り続ける老人と黙々と仕事をする鍛冶屋のみが、腐っていない心を押し殺して生活している。
座頭市と用心棒が金をめぐって共謀してゆく展開と、村を二分する反目親子の諍い、金をめぐる様々な人物の欲望などがそれぞれ絡み合ってゆく。しかし、風雨が吹き荒れる寂れた村に痛快さなど生じるはずもなく、むなしくみんな死んでゆく。そんな中で、ラストの対決と共感はすがすがしくて良かった。座頭市と用心棒の関係を表すイメージ上の演出は三隅研次ほどではないにせよ、岡本喜八もまずまずだった。やはり『用心棒』やもしかしたらその翻案である『荒野の用心棒』などもリファレンスとして重ねられていたりするのだろう。