偶然の一致

家に帰って「徹子の部屋」を観ていた。国鉄の技師から俳優に転身した田中要次。その後DVDにて佐藤寿保監督『フェティスト 熱い吐息』を観る。昨日に続いて2本目となる佐藤作品だが、こっちの方が断然よかった。(西)新宿を舞台にした予備校生の煩悶をこれでもかというほど鮮烈に描いている。
主人公の予備校生は姉夫婦と同じアパートに住んでいる。姉夫婦は夜通しSMプレイに興じていて、それを覗き見する青年は性的煩悶に苛まれる。そして、そのような煩悶の結果なのか、夜中の静かな都市で連続通り魔事件の犯人となってしまっている。
群像劇的に物語は進行する。青年と同じアパートで盗聴や都市の音の収集に励む異常者。青年に魅せられ、やがて愛を結ぶ苦悩の画家。3つの線は2つに結びつき、やがて悲劇的に1本になるところで映画は終わる。
パゾリーニへの言及からか、過剰すぎる身体の捉え方が不気味だった『狂った舞踏会』に比べれば、『フェティスト』の青年は美しいし、彼の煩悶は、現代的というよりも近代文学的で青臭いのだが、(2本の映画を観た限りで判断するなら)佐藤寿保の特徴と言える陰鬱で暗いトーンが抑制として機能していて、青臭さは相対化されている。また、青年たちの青臭さを笑う汚れ役に田中要次が出演しているのだ。(偶然の一致、ここにあり。)
中途半端に現代的な主題を扱うピンク映画よりは、近代的であれ、かなり高い水準でテンションを持続させる佐藤寿保は注目に値する。もっとも、日本映画ではまだまだマイノリティの性であるゲイを、真っ向からエロティックに撮っているということが現代的と言えるかもしれない。他の作品も観てみようと思う。脚本は井土紀州