物語が、はじまる

仕事帰りに「天外魔境3」とついでに「ポップンミュージック10」を買い、ほぼ10年越しの続編がようやく始まった。
冒頭はほぼ「天外2」と同じような形で、祭りから予期せぬ破綻、主人公の旅の開始という運びだった。今回は(まるで恋人のような)妹や(すぐに死を迎える)父といった、血は繋がっていないが家族との関係が描かれているのが印象的で、結局「天外2」同様に、母のみに村を送りだされることになるにせよ、どこか違った印象を受ける。グラフィックのせいもあるけど、妹は妹でも、「ラングリッサー4」のレイチェルのような庇護される妹ではなく、「天外3」の壱与(妹の名)は凛々しい感じのする佇まいで、村の御神体である桜の木の下のシーンなどにはわくわくさせられた。
しかし、まだ1時間少々しかプレイしていないとはいえ、ここまでは期待に届く水準ではない。まず、建物に入ったり画面が切り替わったりする時の読み込みがかなり気になる。ストレスを感じさせるほどではないが、結局何もない民家に出たり入ったりするたびに読み込まれてはたまらない。それだけ情報が高密度になっているということなのかもしれないが、この問題はゲームにおける重要場面の演出にもかかわってくる。
実際、ぼくはPCエンジン(CD-ROM)のゲームに親しんできた者として、読み込みの長さなどはほとんど気にしない。シリーズ1作目の「天外魔境」をはじめ、雑魚との戦闘のたびに長い読み込みのあった「プリンセスミネルバ」や鬼のようなエンカウント率の「コズミックファンタジー3」とか、細部にこだわったせいでゲームバランスが破綻しかけていた「モンスターメーカー」など数々の名作RPGがあった。決して「迷作」ではなくて「名作」だ。個人的に好きだった「プリンセスミネルバ」をとってみても、ボス戦の前にある時代劇風の寸劇やまるで「セーラームーン」調のアニメーションが見たくて、読み込みの長い戦闘も過程として楽しめるのである。さらにこのゲーム、女ばかりのキャラクターの防具装備を替えると、そのグラフィックが表示されるというお楽しみもあり、危ない妄想の世界をここに展開することも可能であった。「王様の……」と形容される防具をつけるとどうなるか? それは「ミネルバ」ファンのみぞ知る。そんなやばさはないが、女学園的世界が楽しい「メガパラ」こと「女神天国」は、RPGとして緩くても何にも変えがたい魅力があったりした。
……脱線してしまったけど、「天外2」が素晴らしいのは、通常の戦闘や村での行動を読み込みなしで軽快にプレイできることが、CD音源の流れる重要なシーンのアニメーションなどの読み込みに要する空白の時間にスリルを生むことに成功しているからだ。この緩急がPCエンジンのゲームには多く生かされていて、中でも「天外2」はそういったゲームの最高峰なのである。しかし、「天外3」はそういった面において、全体的に密度が高すぎるゆえに、逆説的にフラットな印象を受けてしまう。「天外3」の魔物が飛び出すシーンと「天外2」の根の一族が地底から吹き出すシーンを比べてみると、その差は歴然としていて、また立体的に美しいフォルムをもつ魔物も、グロテスクに描かれた根の一族の印象には敵わない。
そういった不満はプレイ1時間ですでにもってしまったが、まだまだこれから。「天外3」の魅力は違うところにあるのだと期待して今夜も続きを楽しみたい。