倦怠と停滞

tido2006-06-26

  • 団地妻、投稿写真に魅せられて…(監督/脚本:後藤大輔、助監督:堀禎一、音楽:野島健太郎、出演:夏目今日子、境賢一、林田ちなみ、本田菊次郎etc)

DVDにて。
夏目今日子の持つ倦怠と後藤大輔が描く郊外の団地の停滞が結実した傑作だった。冒頭、強い日光の下で撮影されたDVでの野外露出プレイの映像が効果的に用いられる。ピンク映画の脚本を書く、ヒモのような生活の男は、自分の撮影したその露出プレイビデオを見ながらオナニーに耽っている。そこに、男の妻を演じる夏目今日子が帰宅。高いヒールで怪我した足首。歩行の停滞が、男の停滞、さらには団地の停滞と重なる。
「やったのか?ピュピューッとやったのか?」
「昼間っからチェーンして、ピュピュッとやったんだろ?」
「あっそー」
ソファーにもたれたまま倦怠感と共に言う夏目今日子の台詞。『欲情ヒッチハイク 求めた人妻』もそうだったけど、夏目今日子という女優はこういった倦怠感を自然に発している。コミカルな芝居もなかなか似合う。
平凡な食卓、スーパー「マルエツ」の特売、団地風景の捨てカット、心地良い音楽……これらがところどころ挿入されることで不思議な調和をもたらす。停滞感が心地良い。一方で刺激として挿入されるSM、投稿写真雑誌「ニャンニャン倶楽部」、「幸せですかー」と叫びながら団地を裸足で走り回る太った女、スワッピング。実際にはこれらも刺激のようでありながら停滞感の中にとりこまれている。
音楽は後藤大輔の傑作『わいせつステージ 何度もつっこんで』に似ているなと思ったら、どちらも野島健太郎によるものだった。覚えておこう。そして助監督は堀禎一堀禎一は『草叢』で団地妻モノの傑作を描いている。