思ったより面白い

クエンティン・タランティーノ脚本・監督『キル・ビル』を観る。2部作になるとか聞いて少し興醒めしていたけれど、なかなか面白い。タランティーノの映画的記憶が詰め込まれた「やり過ぎ」のものになるのかと思いきや、その根底から感じられる情熱が圧倒的なのだ。どの要素にも特別な思い入れがあるようで、高いテンションを維持している。だから、最近のアクション映画にありがちな、「見せ所のために他の要素を犠牲にする」という軽薄さとはまったく別物である。
特に栗山千明(asゴーゴー夕張)とユマ・サーマンの対決シーンは良かった。女子高生の制服姿で鉄球のようなものを振り回す栗山千明が、日本刀のユマ・サーマンとどんなふうに戦うのかと訝っていたら、なかなか華麗に舞ってくれるのである。白い肌と鋭いまなざし。ほとばしる鮮血。やばいくらいにフェティッシュだ。
プロダクションI.Gのアニメパートも躍動感があって、残酷さが感情の高ぶりと重なって、線の美学として描かれていた。ユマ・サーマンルーシー・リューと戦うクライマックスは鈴木清順ばりの色彩空間の中で行われ、極めつけは梶芽衣子の唄う『修羅雪姫』(藤田敏八監督)のテーマがバックに流れるのだった。『キル・ビルvol.2』が観たくてたまらなくなった。『マトリックス・レボリューションズ』なんかより断然観たい。もちろん『マトリックス・レボリューションズ』は観るが…『キル・ビル』の青葉屋の戦いは、『マトリックス・リローデッド』の「スミス百人」の場面よりも圧倒的に面白い。