『座頭市 関所破り』

監督は『座頭市 喧嘩旅』以来の安田公義。とりわけ目立った特徴はないが、バランス良くまとまっている感じだった。そのためか、通俗的な印象が強くて「業」やロマンスもほとんど描かれず、個人的にはもの足りないと思った。通俗性のもっともたるところは、感情の変化を逐語的に追ったBGMだった。また、市のひとりごとが多すぎるのも気になった。市の父親とおぼしき人物との愛憎関係に引っ張られたりしてそれなりに見所がはあるのだが、TV的な時代劇の安っぽさが見え隠れしていて座頭市の物語としては不満足である。
それでも、ラストの一連のシークエンスは形式美の魅力に彩られていて楽しめる。粉雪がちらつく大晦日の夜。関所に監禁された女を救う座頭市。遠くから除夜の鐘が鳴り響き、役人たちをバタバタ切り倒す。その後の初日の出の朝日は夕日みたいだったが…