「崔」を観る

先日に引き続いて崔洋一特集。銀座シネパトス。今宵も電車の音が鳴り響く…。
今回は赤川次郎原作の角川映画『いつか誰かが殺される』だった。1984年の作品。渡辺典子と古尾谷雅人の瑞々しいラブストーリーを主軸にミステリタッチの物語が展開される。印象としては、ちょっとだけ森崎東のような忌まわしさが含まれていて、アイドル映画として素直に割り切れない感じがする。また、『十階のモスキート』と同じくパソコンという意匠が大きな位置を占めていて、画面いっぱいにモニターを映し出し、暗号解析する場面があったりする。
気になったのは、カメラワークにおいて横の平行移動がとても多いということで、つまりはそれだけ、登場人物がまっすぐ走ったり乗り物で移動したりする場面が多いということでもある。ぼく自身、今映画の場面を思い返してみると、渡辺典子がまっすぐ走っている姿を、ミドルショットで横から平行移動で捉えた姿が蘇ってくる。
がらんどうになった新聞社とか気取った上流階級の一家のくたびれた「会食」の場面とか、物語上あまり関係ないのに興味深い描写が気になる反面、少女の成長物語としてよくできていて楽しめた。とはいえ、『十階のモスキート』の魅力には劣ってしまう。やはり崔洋一自身が脚本に関与している方が面白いに違いないのだ。次は土曜の夜。