梶芽衣子 全曲集

tido2004-04-06

起きてからバイトの時間までほんの3、4時間。昨日観た『きょうのできごと』を頭の中で思い返したり、梶芽衣子について考えたり…。
キル・ビル』の波及で「怨み節」と「修羅の花」は甦ったようだが、ぼくがこのところ反復して聴き続けているのは「ジーンズぶるうす」である。もちろん、この前のオールナイトで観た中島貞夫監督の『ジーンズブルース』のイメージもあるが、この歌の軽さと悲しみが均衡した感じが好きだ。イントロはまったく悲しみなんて感じさせないのに、歌が流れていくに連れて、映画『ジーンズブルース』と同じように、行き詰まって居場所がなくなってしまう悲しみが深くなる。
梶芽衣子には2つの側面がある。ネット上で情報収集すると、なんとなく「媚びない」という言葉で捉えられることがあるように思うが、ぼくなりに考えると、そのような「媚びなさ」の徹底化の方向性が2つあるのだ。ひとつは、『女囚さそり』に結実するサイボーグ*1的なイメージであり、ひとつは、『曽根崎心中』に結実する心中志向のイメージである。おそらく前者こそが梶芽衣子に定着したイメージとして強いと思われるが、『ジーンズブルース』の衝撃がぼく自身を揺らがせた。黒のトレンチコートに黒のアコーハット、あるいは修羅雪姫のように薄紫や純白の着物の場合、女の業を断ち切るために、自らをサイボーグ的に武装するのだろう。
西郷隆盛三島由紀夫のロマンチシズムを評する文脈で、宮台真司は心中などを虚数空間での成就という言葉で表していたが、その表現を借りるならば、2つの梶芽衣子は、それぞれ「自己の虚数志向」と「空間の虚数志向」という方向性に分割できる。どちらも70年代の磁場にあるのは自明だが、フィルモグラフィに注意すると、どうやらやはり連合赤軍による「あさま山荘事件」辺りに2つの梶芽衣子の移行期が見えてくるようだ。『ジーンズブルース』も『無宿』も『曽根崎心中』も74年以降だし、先日の日記に書いたように『ジーンズブルース』には明らかに連合赤軍事件のイメージがある。また、1973年に被さっている『修羅雪姫』が2つの梶芽衣子の両方を分かちがたく内包しているのは興味深い。
もっとも、ぼくが観ている梶芽衣子出演作は一部分に過ぎず、今後考えを改めるかもしれないし、『野良猫ロック』シリーズなどは少しずれた位置にあるので、また細かく考えてみたいと思っている。いずれにせよ、バイトの前に「ジーンズぶるうす」を聴きながら漠然と考えたことに過ぎないのであしからず。

  1. 怨み節(作詞:伊藤俊也/作編曲:菊地俊輔)
  2. 女の呪文(作詞:伊藤俊也/作編曲:菊地俊輔)
  3. 修羅の花(作詞:小池一雄/作曲:平尾昌晃/編曲:竜崎孝路
  4. やどかり(作詞:阿久悠/作曲:中村泰士/編曲:竜崎孝路
  5. ジーンズぶるうす(作詞:吉田旺/作曲:井上忠夫/編曲:竜崎孝路
  6. 因果花(作詞:吉田旺/作曲:井上忠夫/編曲:竜崎孝路
  7. 銀蝶渡り鳥(作詞:川内康範/作編曲:曽根幸明
  8. おんな願い唄(作詞:重延浩/作曲:渡辺岳夫/編曲:小谷充)
  9. 別にどうって事でもないし(作詞:ちあき哲也/作編曲:鈴木淳
  10. 酒季の歌(作詞:菅野さほ子/作曲:新井利昌/編曲:京建輔)
  11. あかね雲(作詞:浅木しゅん/作曲:新井利昌/編曲:畠山明博)
  12. 残り火(作詞:阿木耀子/作曲:宇崎竜童/編曲:千野秀一
  13. 命日(作詞:浅木しゅん/作曲:新井利昌/編曲:畠山明博)
  14. 海ほおずき(作詞:喜多篠忠/作曲:市川善光/編曲:渡辺博史
  15. 舟にゆられて(作詞:片桐和子/作曲:矢野誠/編曲:青木望
  16. 別れ話なんか(作詞:なかにし礼/作曲:かまやつひろし/編曲:矢野立美
  17. 雨の夜あなたは(作詞:なかにし礼/作曲:かまやつひろし/編曲:矢野立美
  18. 南風(作詞:浅木しゅん/作曲:下田逸郎/編曲:矢野立美
  19. 晩夏(作詞:吉田旺/作曲:杉本眞人/編曲:小六禮次郎
  20. 芽衣子の夢は夜ひらく(作詞:吉田旺/作曲:曽根幸明/編曲:高田弘)

*1:ぼくは明るくないが、フェミニズム理論の文脈で使われる「サイボーグ」とかじゃなくて、もっと表層的なイメージで…。