爆音ナイト

夜は9時から吉祥寺にてboidプレゼンツ「爆音ナイト」に行く。これは次の5本の映画を、ライヴ音楽用の音響セッティング=文字通り「爆音」で「聴かせる」というものだ。(もちろん映画も上映されている。)

映画館に入って開始を待っていると、青山真治中原昌也がやって来た。boid樋口泰人の姿もあとから見かけた。
黒沢清の『ココロ、オドル。』は段取りされた動きだけで簡単な物語が語られるものだ。もともと雑誌『Invitation』の付録だったらしいが、爆音を身体に浴びながら観るに値する映画だったと思う。『旅芸人の記録』を観ているかのようでもあった。
『クンドゥン』も初めて観た。圧倒的な映像と音楽…とバカみたいに思考停止して酔いしれていたい映画だったが、すべて英語で統一されている辺りが、他者の融合の物語である『ココロ、オドル。』の沈黙とは反対に、中国のチベット侵攻を逆説的に物語るかのようだった。それにしても絵的な物量感はすごくて、ベルトルッチの『リトル・ブッダ』よりも強烈な印象を受けたが、『リトル・ブッダ』自体はかなり前に観たので記憶が薄れているだけなのかもしれない。
ストレート・トゥ・ヘル』。とにかくコートニー・ラヴにやられた。『コール』からさかのぼることおよそ15年前。最後の方にはジャームッシュも出ていて、脳天を撃ち抜かれる。
十分に頭を掻き乱された頃に『デッドマン』がやってきた。緩慢に進行する物語がたびたび挿入されるフェイド・アウトの暗闇やニール・ヤングの音楽と絡み合い、意識は完全に酩酊状態に誘われる。「爆音ナイト」の1番の収穫は『デッドマン』で決まる。かつてビデオで観た『デッドマン』は『デッドマン』ではなかったんじゃないかと本気で考えるほどに、その場の空間が一体となって不思議な体感を誘うのだった。
ニール・ヤング&クレイジー・ホースのドキュメンタリー『イヤー・オブ・ザ・ホース』は、彼らの音楽にせよ言葉にせよ、しっかり聴かせてくれる内容であり、8ミリや16ミリの粗さも安っぽさに直結しない。しかし、ここで観たすべての映画をビデオで観ることを想像したら、どれも明らかに違うものとして、もっと言えば劣ったものとして感じられるのはほぼ間違いなく、改めてメディア性というものを考えねばと感じてしまった。