虚像と実像

沢田研二主演、内田栄一脚本、藤田敏八&加藤彰監督『炎の肖像』をDVDで観る。やっぱりDVDは良いな。
実際のジュリーのライヴや生活(?)とフィクションが交錯する物語。女を捨て、行きずりで出会った男とまるでホモセクシャル的に共感し、父とはまるで父でないかのように付き合い、突然自分のところに訪れてきた見知らぬ女(秋吉久美子)を追われると思いきや、今度は追い始め、妙な距離感を縮めたり遠ざけたりする。素朴に捉えられる街の風景と、そこから隔絶されたようなライヴや自らの生活空間、その中間に位置するかのような海やトラックに乗ってたどり着いた雪の風景。しかしながら、ジュリー自身の表情はどこに行っても同じように無表情に近いままであり続ける。虚像でも実像でもない存在の過剰さが露呈しているのである。
中でも、地井武男の演じるトラック運転手と沢田研二の関係が面白く、ロードムービー調に北へ向かいつつも、トラック運転手の妻と入れ替えに彼は降りねばならず、入れ替わったそばから、その夫婦は熱烈なキスをし始め、窓の外から沢田研二はそれを眺め、すぐに歩き始めるという場面は、風景と重なって物寂しい感じがする。