ピンク・ヌーヴェルヴァーグとその周辺へ

佐藤寿保監督『狂った舞踏会』をDVDで観る。2、3年前ぐらいだったか、「ピンク・ヌーヴェルヴァーグ」の特集をアップリンクでやっていたことがあったので、瀬々敬久監督の一昔前の映画などを観ていた。その時はあまり深入りしなかったが、TUTAYAにはその周辺の人たちのDVDやビデオもある程度揃っているようなので、この機会に観てみることにした。
ひとくくりにしてしまえばゲイ・ムービーなのだが、パゾリーニへの思いや極端なサディズムマゾヒズム*1、奇をてらったカメラアングル、ちょっとした異化効果を引き起こす抑揚のない台詞…などなどかなり挑発的な作風である。冒頭はいきなりボディービルダーの筋肉を画面いっぱいあふれんばかりに映し出し、そういった類のコンテストかと思いきや、ボディービルダーの横では暗黒舞踏の白塗りや中国拳法風のポージングをするスリムな男が並んでいる。
この映画に多少なりとも惹かれてしまうのは、全体を覆う救いようのない陰鬱な暗さである。色調はもちろん暗いのだが、音楽や演技もそれにあいまっている。しかし、完全に暗いというわけではなく、どこかユーモアと紙一重のところがあり、それは狂気と呼べるほどの緊張を呼び起こす。ホルマリン漬けの切断された右腕、突然持ち出される刀身の長いドス、パゾリーニの映画への言及。それらがこの映画に独特の不気味さを常に喚起するのだった。助監督には瀬々敬久

*1:それは、片腕切断や両目潰しという形に結実する。