恐るべし…

 我に従え、読者よ! この世に本物の確かな永遠の愛などないなどと誰が汝に言ったのか? そんな嘘つきはその下劣な舌をチョン斬られますように!
 我に従え、我が読者よ、我にのみ従え、されば我は汝にそうした愛を見せん!(ミハイル・ブルガーコフ著/法木綾子訳『巨匠とマルガリータ』より)

なんで今までこのとてつもない傑作を読まなかったのだろうか…と読了後はまず最大級の後悔に襲われたのだが、読んでいる時はひとえにこの小説の果てしない持続感に酔いしれ、興奮冷めやらぬ状態が張りつめていた。ペテルブルグではなくモスクワ!歴史性を帯びたモスクワ的な狂気の、いや救済の物語。
詩人と編集者の会話に割り込んだ外国人教授。そして語られるポンティオ・ピラトの物語。精神病院で邂逅する詩人と巨匠。そして語られる巨匠とマルガリータの物語。悪魔たちの大サーカス。全裸でモスクワの空を飛行するマルガリータ。これぞ小説の興奮!ゴーゴリの伝統をさらに跳躍して見せたミハイル・ブルガーコフは巨匠か悪魔か…
ロシア文学の地図を一気に塗り替えられたような気分。悪くない。そういえば、火曜日の講義はまさに『巨匠とマルガリータ』の戯曲を原文で読むというものだった。朝早くてほとんど行ってなかったけど。来週からは予習して行こうと決心した。