孤独な死と群集

この映画でケイト・ブランシェットがそれほど魅力的に思えないのはなぜかと考えてみたら、そういえば『フォーン・ブース』のコリン・ファレルもそれほど魅力的ではなかったし、さかのぼれば『依頼人』のスーザン・サランドンや『フォーリング・ダウン』のマイケル・ダグラスもまた然りだったような気がする。ジョエル・シューマカーの扱う人物は、モチーフの印象としては求心的であるにもかかわらず、実際に映画を観るとそれほど求心力がないように思える。
フォーン・ブース』を観た後、多少なりともジョエル・シューマカーフィルモグラフィーに興味を覚えたのにそのまま忘れていた。とりわけ99年以降のハイ・ペースから察するに製作方面への能力は高いのだろう。『ヴェロニカ・ゲリン』のような実話ものを扱ったからといって、題材への本質的な共感があるとは思えないし、それほど印象に残るような特徴が刻まれているわけでもない。都市の群集や孤独者の戦いといったモチーフも、フィルモグラフィーの全般に渡って一貫しているとは言えないかもしれない。ぼくが観たのは4〜5本足らずだ。とりあえず残りの作品を観るとしよう。いつになるか分からないが…。