悪くはない

tido2004-08-10

BSアニメか何かで『機関車先生』を観たのは高校性ぐらいの時で、あまりに孤独な時期だったせいか不覚にも涙してしまったのだが、こうして新作映画として観るとあまり特筆すべき点などない夏休み映画に仕上がっていた。廣木隆一長回しによって持続的に演技させるという配慮はしているにせよ、子供たちの存在ということで言えば、やはり『誰も知らない』の魅力にはまったく劣ってしまう。持続的に運動を捉えるということに限っても、中途半端な印象を覚えるし、題材が『機関車先生』なのだから期待するのも酷だろう。良くも悪くも、小・中学校の教科書的なのだ。やはり廣木隆一穿った題材における関係性をしっかり撮った方がいい。 
DVDでようやく『デブラ・ウィンガーを探して』を観た。このドキュメンタリーには感銘を受けた。あまりに「普通」をさらけ出す35人(監督したロザンナ・アークェットを含む)の女優たち。彼女らが吐き出す言葉の洪水は、もはやハリウッドなど信じておらず、そこは単なる出稼ぎの場に過ぎないことを露呈させる。しかも、そこでは性的な侵害がまかり通っている。例えばメグ・ライアンへのインタヴューにおいて、彼女が欲望の視線に不安を覚えることを告白する瞬間を観るとき、消極的にではあれ、その視線に加担している自分自身を恥じた。『イン・ザ・カット』は、メグ・ライアンのこれまで築いた自信とそのような不安が刻印されているから素晴らしいのだと思う。女たちの集いの中で、これまでとは違った映画の見方を作っていきたいと言う発言があったが、36人の女の言葉の洪水で埋め尽くされたこの映画は、その宣言となるような映画だったように思った。だからこそ、彼女らの今後の実践よりもむしろこれからの若い女優の動向が気になる。適当な例かどうか分からないが、アンジェリーナ・ジョリーハル・ベリーの「積極的無分別」は開拓のように見えて抑圧的にも見える。彼女らが活躍することは、おそらく同系等の女優への希求のインフレへとつながるに違いないが…
DVDのレンタルコーナーに行くと店によっては新入荷の作品が無差別においてあるところがあって、目に付いたものを適当にレンタルしてしまう。そして返却日になってあわててまとめ観するのだった。瀬々敬久監督/脚本『ドッグ・スター』はまずまずの内容。やはり低予算のピンク映画と比べると冗長な印象を受けるが、驚くほど多用される縦の構図や事故の描き方など瀬々的な映画ではあった。「エロス番長」に期待! 
豊田利晃監督/脚本『青い春』は思ったより良かった。劇場に行くべきだった。閉鎖性とユートピア的な弛緩とが同居するかのような奇妙な学校空間。松田龍平は屋上に佇まずとも、学校内どこでも屋上のようにしてしまう。