よくできた映画だが

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張り詰めた雰囲気を持続させる前半から、ある種定番となった「オチ」を経て、『シャイニング』のような後半に至るまで、この映画はよくできていると言える。伏線となる数々の「予兆」を細々と積み重ね、それがすべて解明される瞬間のカタルシス。すでに『アイデンティティ』などの先行例があったため、ある程度予測はできたものの、丹念な演出がそこに至る気分を盛り上げてくれる。高レベルな芝居もいい。特にダコタ・ファニングはこういった超−演技が似合いすぎている。前髪を上げた彼女を見るたびにぼくはレクター博士を思い出すのだが、彼女は演技がうまいというより(もちろんうまいのだが)、演技の種類が明らかに違うのだろう。しかし、こういった極限状況の演技ばかりやっていて、本人や周囲は飽きないのだろうか? むしろ、普通の芝居をいかに普通にこなすか、ということの方が挑戦になるだろうし、ぼく自身は純粋にそっちを見てみたいと思うが……
それはさておき、このよくできた映画も、他のこの種の「オチ映画」と同様に困難を抱えている。ネタが割れた時点で一気に醒めてしまう可能性は高い。しかも、出演者はデ・ニーロときた。デ・ニーロの「なりきり」演技は見ものではあるだろうが、何をやろうとデ・ニーロはデ・ニーロでしかない。巧いなあ、すごいなあ、みたいに思えても、まったく興味をそそられない。演出の緊張感が高く、その積み重ねも丹念なだけに、ちょっとした部分で積み木のようにもろく崩れ去ってしまう。これはそういった映画だ。面白いだけにもったいない。もうちょっと違う方向性に重点をずらせば、ショーン・ペンの『プレッジ』みたいな面白さにつながったかもしれないが、それは個人的な感想である。