地域零細書店の謎

前から気になっていたけどなぜ潰れないの?と疑問に思うような駅前の個人書店を見かけたことがないだろうか? まあ潰れてしまったところも多いとは思うが、ぼくはそういった書店を見かけることがある。
板橋区のとある書店を愛用しているが、そこは老夫婦交互に店番をしていて、驚くべきことにじいさんの方は人工呼吸の補助器みたいなのを奥の部屋から鼻につないだままだということだ。買った本を紙袋に包む手つきもおつりを払う手つきもかなり衰弱しているものの、この2年ほどはずっとその状態を保ち続けているようだ。さらに、この書店、いつ行ってもだいたい客がいないのだが、エロ本とエロ漫画の品揃えは風俗系雑誌・書籍の専門店MANZOKUを凌駕するほど。ジャンルの豊富さもすばらしく、SM系やニューハーフ系のエロ本を買うときには重宝している。一体どういう流通が背景にあるのだろう?
最近たびたび登場願う佐野眞一著『だれが「本」を殺すのか』にはヒントみたいなものがあったけど、どうやら今挙げたような本屋の存続の理由にはなっていない。地域零細書店が生き延びることができていたのは、55年体制の下、旧社会党が生き延びることができたということに深く関係していたのだ。こういった個人書店はだいたい旧社会党の支持者であり、日教組を長年牛耳ってきた旧社会党がそんな書店に教科書や教材販売の利権を流していた、ということらしい。55年体制崩壊後も出版業界の旧体質のためか、市場原理の影響からある程度距離を置くことができた零細書店は自分たちが食っていくぐらいは可能だったのだろう。
けれども、ぼくが気になるその書店にはもちろん教科書など置いておらず、エロ本だってあまり売れているのを目にしない。それに立ち読みしているとすぐに買うのかどうか訊いてきて圧力をかけられる。そんな書店、物好きでもなければ、誰も行きたくないだろう。年金で食っているだけなんだろうか? 今度行ったらそれとなく訊ねてみようと思う。