林由美香追悼上映@上野日本名画劇場

tido2005-07-24

今月いっぱいで仕事をやめ、1ヶ月ぐらい帰省するので、東京のピンク映画館詣でをするのも今週まで。当分はスクリーン上の林由美香の姿を見られなくなってしまう。岡山のピンク映画館で特集をやってくれていればいいが……

  • エッチな天使 ねっちゃり白衣(監督/共同脚本:関根和美、出演:林由美香etc)

傑作コメディ。前にも観た気がするが、意外な出来の良さにすっかり没頭。もちろんご都合主義的なストーリーであるが、登場人物すべてを魅力的に描いていて好感がもてる。それに過剰なキャラづけをほとんどの役者が見事に体現していて、寒いギャグやシチュエーションでも画面がもつという奇蹟。
特に林由美香。この映画を観れば、柳下毅一郎が言う通り、林由美香は「悲劇に回収されてしまってはならない人」だということが心底分かる。ちょっとした独り言の正面からのショット、気を抜いてタバコを吹かす場面、白衣の姿、しかめっ面、セクハラへの切り返し、ビール一杯の悪酔い、幸福そうな寝顔、おじさん患者との「共闘」、友情、お礼のセックス、一滴の涙……くるくると表情を変え、コミカルに演じる彼女の姿に魅了されつつ、すごい女優だなと思わずにいられない。
物語上、意外な展開がある。とある病院で働くことになった林由美香。彼女はいろいろな病院で失態を重ね、その悪名を馳せている。勤務初日、いきなり彼女は夜勤中にレイプされる。犯人は完全に身を包んでいて誰だか分からない。彼女はどうしようもないおじさん患者3人がいる病室を担当させられる。自称ホスト、遊び人、ぎっくり腰の釣り師。彼女は彼らのうちの誰かをレイプの容疑者だと疑いつつ、ひとりひとりとそれなりに交流を深めていき、容疑者は残りひとりに絞られ……ある日の夜中、レイプされた部屋に入っていくと再び襲われる。抵抗むなしくされるがままになっていると、ドアが開いて容疑者だったおじさんが助けてくれる。犯人の覆面をはがす。すると女の顔。実は、林由美香が昔働いていた病院で包茎手術を誤って男性器すべて切り取ってしまった(ありえない設定!)患者だった。まだ童貞だったのにそんなことになって悲観に暮れ、犯行に及んだのだった。助けてくれたおじさんも同情する。告白後、感極まって走り去る彼=彼女。「追わないのか?」とおじさん。何食わない表情で「だって、追ってどうにかなるわけでもないし」と林由美香。この感触。これぞ「悲劇に回収されてしまってはならない人」たるゆえんである。
ラストのコミカルな一連のショットも素晴らしい。演技ともアドリブともつかない最後の台詞と動作。なんで「ドラゴン怒りの鉄拳」なんだろう? いや、それでいいのだ。