堕ちる

先日、意を決して向ったスロットのイベントで最後の資金を失い、とうとう2年ぶりぐらいに預金残高がゼロとなってしまい、生活上でも様々な支障に襲われ、堕落に堕落を重ね続け、これはいけないと思って登録制のバイトなどをやろうとしたのだが、当日寝坊してしまうという失態をやらかすという結果になった。
来週には自主映画のために帰省する予定なので、かろうじて新幹線代は確保している。もっともそのために腰をすえて仕事をするわけにはいかず、ブックオフに本やCDやDVDを売った金で日々の生活を凌いでいる。堕落気分が抜けない中で、佐野眞一の『東電OL殺人事件』を読むと東電女の「大堕落」が綴られていたのだった。
1997年の事件だということを改めて考えると、意外に最近のことだったのだなと思えるが、やはり渡辺泰子という人物の遍歴を考慮すると、事件=破局そのものよりも堕落に至る過程の方が興味をひく問題であり、あまり同時代的に感じられなかった。が、『東電OL殺人事件』を読むと風景=地理の問題が重視されていることもあって、さらには自分自身の今の状況のせいもあるのか、とても身近な問題に思えてならない。そういえば最近渋谷に行ったらくじら屋の近くにあった恋文横町がなくなっていた。大通りからその路地に入ったすぐ脇にあった定食屋はいつも空いている割にはうまい定食が食えて重宝していたのに……残念である。円山町のラブホテルは1度だけ使ったことがあるが、乱立したホテルのどこだったのか今では覚えていない。このルポを読みながらその独特の空間にひかれ続けるとはどういうことだろうかと思いをめぐらせてみた。分かりそうで分からない気がした。
さらに、堕落しきった生活の中で久しぶりにセガサターンを引っ張りだして、何年も前に買ったまま放置していた『銀河お嬢様伝説ユナ3』に熱をあげていた。かつてPCエンジンでこのシリーズの1作目、2作目、そしてPC-FXで3作目までやっていたわけだが、それはぼくの青春期に大きすぎる影響を及ぼしている。それまで面白いゲームの多くは、『天使の詩』や『天外魔境』など荒廃した世界を存分に見せてくれたのだが、ノー天気な世界で魅了されたのは『女神天国』と並んでこの『ユナ』に他ならなかった。思い出すだけで笑みがこぼれてくるような至福の体験をもたらしてくれる女というか少女の戯れは、もちろん『ユナ3』にも健在であり、この数日をひたすら豊かなものにしてくれた。ただし、非日常性が強いのと『サクラ大戦』まがいのシミュレーションバトルが少々不満足な点ではあった。それにしても豪華な声優陣、さすがオタク心をくすぐるあかほりさとるらのシナリオ。エリカ7の登場には思わず涙を流しそうになったほどだ。
光で闇を照らす神楽坂ユナとは、闇で闇を照らし出した東電OL渡辺泰子とちょうど対照的な存在である。ついでに言えば、神楽坂ユナをエッチな明るさにすれば、いくつかの作品の林由美香である。ということは……ぼくにとって『銀嬢伝』とはやはり、とてつもなく大きな存在だということだ。
そして久しぶりに島田雅彦を今読んでいる。『退廃姉妹』の久美子という存在もやはり……。

退廃姉妹

退廃姉妹