エンジェル・オブ・ファイア

中断するとなかなか書けなくなってしまうものである。本当はいろいろと書きたいのだけど、なかなか集中できない。でも、しだいに落ち着いてきたのでそろそろ何か書き綴っていきたいと思う。

『マイ・ボディーガード』の原題は確か「マン・オン・ファイア」だったはずであるが、今回の『ドミノ』の最後の方でも「エンジェル・オブ・ファイア」とドミノを呼ぶ場面があって、トニー・スコットはよっぽど炎が好きなんだなぁと思った。実際、トニー・スコットの映画はうちに秘めた「アツさ」に特徴づけられていて、その部分が魅力的な点となっている。
しかし今回はいつもに増してさらにエフェクト感が強まった気がする。畳み掛けるようなクローズアップやスローモーションの連打に加えて、断片的なショットやオーバーラップが重ねられ、それら映像は激しいBGMのリズムに乗る。MTV的な感触を生かした映画の中では、たぶんトニー・スコットの映画ほど気持ち良く畳み掛けてくるものは少ないだろう。個人的にはいつも鼻についてしまうそういった映画において、トニー・スコットの映画はそれに回収しきれないものを滲ませている。
まあ、それでも今回はちょっときつかった。『マイ・ボディーガード』ほど落ち着いてはいないせいか、無駄に複雑なつくりが消化不良を起こしそうだった。本当に疲れた。この映画はあまりスクリーンに近づきすぎない方がいい。
そういえば、本当につまらない映画だった『キング・アーサー』で唯一の見所だったキーラ・ナイトレイが主演しているのは良かった。ただし、トニー・スコット的な撮り方のせいでじっくり彼女を眺めることができないのは残念だった。
この世には3つの人間がいる。金持ちと貧乏人と……中間だ。最後に流れるこのナレーションだが、映画の中盤では、金持ちと貧乏人と……その仲間、だった。ドミノ自身の序盤のナレーションにも、合法と非合法の間で……みたいなのがある。このところのトニー・スコットの映画はまさにその「中間」を描こうとしていると思えるが、次回はどういったものを撮るのか少々気になるところである。