GWGD(ゴールデンウィーク・ガメラデー)

ぼくは怪獣オタクでも特撮オタクでもないので、それほどの思い入れもなく、ただ平成ガメラからの方向転換ということへの興味ぐらいで『小さき勇者たち』を観に行ったのだった。しかし、あまりの出来の良さに夢中になり、ただひたすら無心にウルトラマンシリーズやら仮面ライダーシリーズをビデオで観ていた子供の頃の興奮がよみがえってきた。強い意志の下、平成ガメラアヴァンギャルドから王道エンタテイメントへ。
そういう意味で誰しもが興奮できる映画に仕上がっている。ジュブナイル映画として、動物映画として、そして怪獣映画として、このニューガメラが再生したのである。物語を追う必要などないだろう。夏帆の演じる少女が富岡涼の演じる少年に向って「あのトト(少年の亀のこと)とこのトト(少年は死んだ母にそう呼ばれていた)」と指を指す場面。人間を食い散らかす凶暴な怪獣ジーダスが志摩の町に襲いかかり、ひとりの少年を助けようとした津田寛治らの危機に小さな身体のトト(後にガメラとなる?)が体当たりを食らわす場面。赤い石のリレ−をする子供たちの汚れた顔。父と息子がひとつの意志を共有する場面。ジーダスのアクロバティックな投げ技によって高層ビルに突っ込んだトトと必死にビルを上った少年の対峙、その真横からのショット。これらの素晴らしいカットがあるだけでも『小さき勇者たち』を観る価値があるというものだ。
ジーダスが大爆発によって絶命する瞬間。かつてウルトラマンシリーズで観ていたようにわずかな静止画の間の後、膨張し、本当に怪獣らしいジーダスの肉体は木っ端みじんとなる。映画の後、ロフトプラスワンガメライベントに行ったら、その席で数々の秘話が明かされた。その最後の爆破のシーンは実際にジーダスの着ぐるみを固めて火薬を詰めて爆破したのだという。それがあの迫力だったわけだ。イベントに集っていたのはアニオタイベントを一回り二回り上回る年齢層が主流だった。さすがタイムリーに怪獣映画たちを体験したという思い入れの熱量はすごい。みんなあからさまに熱狂するというわけではないけど、スタッフ陣、ファン共々、本当に怪獣映画というものに強い思いを抱いているのだなということがしっかり窺えた。そういうものがあるというのは何にせよ素晴らしいことだと思う。