地震、トラウマ、統合失調症、濡れたパンスト、強迫電話、ホームレス、近親相姦、夢の島etc

  • 肉体秘書 パンスト濡らして(監督:池島ゆたか、脚本:五代暁子、出演:池田こずえ、華沢レモンetc)
  • 淫絶!人妻をやる(監督/脚本:深町章etc)
  • OL破れたエロ下着(監督/脚本:後藤大輔、音楽:怖[COA]etc)

新宿国際名画座にて。3本すべて水準を超える出来である。
『肉体秘書 パンスト濡らして』。本作のみ去年の作品。五代暁子の脚本作品はなかなか好きだ。やさしく女を包み込む。そして池田こずえ。先日の『痴態エステ 舐めて交わる』も五代暁子脚本×池田こずえ出演だった。池田こずえの魅力に注目すれば、『痴態エステ』の方が良い。『肉体秘書』はちょっと詰め込み過ぎな感があった。阪神大震災統合失調症、父と娘のエディプス的関係、ショッカー的闇組織、探偵……などなど。今回は悪女を演じた華沢レモンは出演しているだけで、その映画がパッと明るくなるし、池田こずえ同様、女優のみでも観に行きたい存在である。というわけで、そこそこの傑作。
『淫絶!人妻をやる』は情緒的で綻びのない良作。個人的にはあまり興味をもてないけど、最初と最後の語りの構造といい、作品世界をしっかり構築している。ひとつひとつのセックスシーンが割と長いため、サービスたっぷりとは言えるけど、エロ目当てじゃないとけっこうだれてしまうという難点がある。
そして『OL破れたエロ下着』。後藤大輔が監督&脚本。昨年度ピンク大賞第2位『わいせつステージ 何度もつっこんで』も傑作だったが、ぼくは本作の方がさらにすごいと思う。冒頭から圧倒的。男女の意味不明なかけ声の独特のリズムで始まる映画は、街を疾走する男、浮遊する女子高生、停滞するホームレス、夢の島でゴミにまみれて互いの性器に「くっせぇー」と叫びながら激しくセックスする男女、彼らのアンサンブルによってめまぐるしく語り出される。名前をメモるのを忘れた(漢字の読み方も分からなかった)が主演級の女優がすごい。決してきれいなタイプではなく、スタイルもそれほどよくない。暴力的で男勝りなたがの外れた人物として描かれる彼女と一緒に行動するのは頭も身体も弱そうな男。2人は1000万強奪する計画を実行する。一方、冒頭で疾走していたヤクザ男は浮遊する女子高生を犯し、彼もやはり1000万を求めていた。
そんな4人が出くわすのは強奪に入った金庫のある部屋。そこでまた2人追加。その会社の中年課長と愛人OL。ヤクザ男にレイプされた少女は中年課長の娘であり、近親相姦の関係でもあった。混沌。のち、大地震によって6人は監禁状態となる。暴力、レイプが行われた後、それぞれの関係が生まれてゆく。その密室だが、おそらく新東宝の事務所が使われているのだろう。フィルム倉庫らしき部分もあり、登場人物たちの狂乱と地震によって物は散乱し、体液と血液、精液が飛散する。食い物もない。頼りない放送。何が起こっているのか分からない。しかし、彼らはそれほど状況に関心がないように思える。社会を追いやられた人物ばかりだ。
それは最後の4日間。監禁された密室で社会ばかりか小さなその集まりの中でも追いつめられ、煮詰まった果てに生まれる愛がある。トイレの天井に脱出の希望があった。そんな兆しのようなはかない愛である。腹部から大量の血を流し、死に瀕した男。あらくれ女は最後のセックスをしようと男のチンポをくわえ一言。
「くっせぇー」
2人が最高の笑顔をスクリーンに刻み、男はまもなく絶命。怖(COA)による音楽もなかなか良い。脱出した女はビルの屋上に出る。もちろんピンク映画、低予算である。大地震で破滅した街など映せない。しかし、画面には明らかに廃墟が見えた。ビルの縁を下着姿で歩く女の姿に反映していたと確信できる。もうネタバレもクソもない。すべて書かないと気が済まない。ビルの下にはホームレスがいる。映画の冒頭で公園にいたホームレスだ。彼はずっと停滞していた。そんなホームレスに女が1000万円入ったバッグを投げて叫ぶ。
「(私を)受けとめて! そしたらその金ぜんぶあげる!」
ホームレスはバッグの中身を確認してから叫ぶ。
「来い! 受けとめてやる! 金は山分けだ!」
勢いをつけてジャンプ! 神代辰巳の映画のようにジャンプする女のストップモーションで映画は幕を閉じるのだった。これは早くも本年度ピンク大賞候補じゃないか? いや、来週にはいまおかしんじの新作『絶倫絶女』も登場する。ハイクオリティな2006年ピンク映画。今年は油断できそうにない。