陽気なピンクは子宮を満たす

  • 悶絶!!痴漢電車(監督:友松直之、脚本:大河原ちさと、出演:北川明花、武田勝晴、北川絵美、華沢レモンetc)
  • ヒモのひろし(監督:田尻裕司、脚本:守屋文雄、出演:吉岡睦雄、平沢里菜子藍山みなみ、佐野和宏etc)

さて、いつの間にかプログラムBも最終日となっていたので再びポレポレ東中野へ行って来た。ちょうど舞台挨拶もあったみたいでほぼ満席となる盛況ぶりであった。
前者は『電車男』のパロディ。開き直ってやっている分、清々しい。本家と同じ台詞が卑猥な文脈で絶妙に使われたりするところはさすが。某掲示板の住人たちが幽霊という設定にすることで、まったく構造は同じなのだが、死者からの励ましという構図が面白かった。面白かったのだが、昨年のピンク大賞で3位となるほどの出来ではないように思えた。あくまでパロディとしては面白いということだ。一見の価値はある。
『ヒモのひろし』は田尻裕司がめずらしくコメディタッチに挑戦している映画。激しいセックス、太鼓のリズム、コオロギ相撲……などなど、ひとつひとつの要素が強度をもっていて、ほとんど物語らしきものがないこの映画をそれらの存在だけで濃密にしている。いまおかしんじのピンクに近い。『かえるのうた』を意識しているのかしてないのか、かえるのぬいぐるみがなぜか出ていたりする。平沢里菜子藍山みなみは『絶倫絶女』でも共演している。吉岡睦雄は言うまでもない。彼の存在は大きい。だらしない役をやらせれば最強。もはやピンクに欠かせない存在である。
映画の冒頭で若い母と息子を追いかけて走って来るヒモ男のストップモーション、そこにタイトル(ピンク上映時のもの)「SEXマシン 卑猥な季節」、タイトルバックでの風景など、日活ロマンポルノを思い起こさせる感じでわくわくさせられる。ただし、ラストが惜しい気がした。登場人物が集まってヒモのひろしの墓を拝む場面はよいのだが、ちょっと人数が多すぎた。そこまでの話の中で一部の人物しかひろしとの関係を描き切れていない。人数を絞るか、もっと濃密に描き切った上であの場面が来ると、もっと良い感じになっただろうと思う。惜しい映画と言えるだろう。