女性観客を意識したレズビアンピンク映画

  • 貝あわせ、痴女とOL(監督:佐藤吏、脚本:高橋祐太、出演:夏目今日子、ナンシー、速水今日子etc)

DVDにて。もともとのタイトル『ハードレズビアン クイック&ディープ』から想像するような内容ではなく、むしろソフトなレズビアンが描かれる。これで去年のピンク大賞ベスト10は国沢実の『欲情喪服妻 うずく』を除いて観たことになる。
明るさに包まれた映像、ナンシーの不思議な笑顔、いくつかのパターンのすれ違いをとらえるロングショットなど印象的な部分はいくつかある。しかし、それを除けばもの足りなさが募る映画だった。夏目今日子にしても、他の映画での佇まいを目撃してしまったし、芯の強さがあるせいか、レズビアンをカミングアウトできないでいる感じがあまりしっくりこない。ぼくの方が変に固定観念をもってしまったせいかもしれないが。同じ事が速水今日子にも言えて、ママさん役はぴったりだけど、その後に夏目今日子とレズプレイをするという流れは素直に受け入れ難かった。『草叢』の記憶のせいだろうか。同じ役者が多くの映画の脇役として存在感を示すのは、今なおプログラムピクチャーとしてその生命を引き延ばしているピンクの良さではあるけど、一方で新鮮さが必要になる役所も同じ顔ぶれが担わなければならないというのはピンクの限界でもある。その点でナンシーの存在は新鮮だった。それにピンク映画でレズビアンがフェティッシュなものとして扱われないのは新鮮。