邪教あるいは集合的記憶VS母神あるいは胎内回帰

近所のシネコンにて。駄作とは言わないが、原作ゲームファンとしてはこれといって驚くべき点もなく、消化不良。ゲームの音楽をいくつか用いていたり、荒廃した街サイレントヒルの臨場感はそれなりに味わえる。物語的には原作の翻案が強く押し出されていて、特に夫婦の関係を導入しつつ、結末をあのような形にしたというのは、アメリカの現実を反映しているのだろうか。
『リング』について、高橋洋が母子という設定に置き換えたのは、子供を守り戦う女性を描いた方が「強い」と考えたからだし、恐怖する男より恐怖する女の顔の方が怖いだろう。そのパターンで、母と娘の関係を主軸にするのは当然かもしれないのだが、そこに存在感の薄いショーン・ビーン演じる夫が中途半端に介在してくるというのはよく分からない。結末を観れば、それを描きたかったのかと思うような終わり方をしているのだが、やっぱりフィクションに閉ざすという作りにはしたくなかったんだろう。現実を反映させるにしても、偉大なホラー映画『回転』のように、もっと怖い終わり方をすれば良かったのに……と思う。
それほど必要性を感じられないのに過激でグロい描写をするというのも、ちょっと興ざめだった。明らかにCGだなという、あまりに鮮やかすぎる処理をしているからというのもある。せっかくサイレントヒルの荒廃した闇というモチーフがあるのだから、気合いを入れた生々しく不気味な地獄絵図に挑戦して欲しかった。あと、やけに上下に滑らかに動き過ぎるカメラワーク、それほど必然性のない短いカット割が邪魔だった。もっと落ち着けよ、と思わず口に出しそうになった。好みの問題でもあるかもしれない。