消尽したもの

頭脳労働、肉体労働、共に限界まで尽き果てる。今年最後のバイトを終えて意識朦朧としながら「蘊蓄バトル」を見ていた。歴史の屑拾いならぬ知識の屑拾い。
ぼくの働くホテルのオーナーはいくつかアパートやマンションを所有しているのだけれど、今日聞いた話では、部屋を貸していた若い女性がよくテレビに取り上げられたような「ゴミ女」で、いつの間にか家賃を滞納したまま逃げていったということで、不動産屋を介してその女を訴えたらしい。訴訟には勝ったらしくリフォーム代を請求しているということだ。
訴訟についてはそういうことらしいが、ゴミの山の中には赤ん坊の死体が入った瓶があったとかなかったとか…らしい。こういうことが表沙汰になると、所有者にしては百害あって一利なしということだからもみ消しは日常茶飯事に行われる。踏み込んだゴミ女の部屋の浴槽は生理用品がぴっしりといっぱいに詰め込まれていたそうだ。それを聞くとぞくっときた。
ちょっと前に、ぼくが葬儀屋でバイトをしていた時も、腐乱死体の話をよく聞かされた。あるいは仕事の最中に上司の携帯に「その話」が舞い込んでくることがたまにあった。死体のどうしようもない腐臭が染み込んだアパートは、葬儀屋によって安く買い取られ、格安で希望者に分配するらしい。ぼくも一等地のマンションを数百万とかで勧められた。地下では何が行われているか分かったもんじゃない。レイヤーごとに棲み分けられた世界。ぼくが見たり感じたりしているのはその中のひとつやそこらの世界でしかないのだろう。