柔らかい対談@ジュンク堂
『野性時代』の岩井志麻子とオダギリジョーの岡山対談に、岡山県人としてちょっとした共感を覚え、続く川上弘美と柴田元幸の恋愛対談を読もうかどうしようかと考えていた時に待ち合わせの時間が来た。その対談を読まなかったことを後で少し後悔した。さすがにひとりで行くほど熱心な読者ではなかったので、ぼくは彼女を誘って川上弘美と水原紫苑のトークセッションに参加した。やがて現れた2人は、なんというか…柔らかかった。
テーマとしては、「固有名詞としての名前」から「場所に関する話」に移り、そして「散文と韻文」についてお互いの小説・短歌に触れつつ、取材と記憶の話を挟み、「ディテールの<愉しさ>」の興味深い話*1、川上弘美の小説における「一対多」、本当はこれが全体のテーマとして与えられていたのだが意外に淡泊(というか抽象的)だった「恋の話」などなど。他にも「世界の滅び」「人の役に立ちたいけどキッカケがないということ」や、ファンにとっては興味深い川上弘美の「髪の長さ」「Sの女王様になりたいけど難しいんですよ」「執筆時間と助走期間」に関するあれこれ。
ぼく個人としては、川上さんが「うん、うん」とか「そうか、そうか」と水原さんに相づちを打つリズムが心地よくて、まるで小説と地続き世界を立ち上げるかのように、それほど密度があるとは思えない話の中にぐいぐい引き込まれてしまうのだった。言うまでもなく、ぼくは完全な川上弘美ファンになった。そして対談後、『ニシノユキヒコの恋と冒険』を買いサインして貰った。サインして貰う時にちょっとだけお話できて、石井政之の時のぶっきらぼうな態度*2とは違って、川上弘美さんの書評のファンで取り上げられた本はいつも買ってますということを話したら、書評本を今度出すという話と朝日は終わって他の新聞で書くという話、今はウェブ上で見られるからいいねという話などしてくれて、短い間にますます川上弘美ファン度が加速してしまったのだった。全作品読破を目標に掲げておこう。