角川映画はもうたくさん

崔洋一特集で永島敏行と原田知世主演の『黒いドレスの女』。1987年の角川映画だ。この前の『友よ、静かに瞑れ』同様に北方謙三が原作。しかし、沖縄が舞台だったその作品に比べて、今回は東京を舞台としていることも関係するのか、虚構世界を忠実に再現しようとした見所の少ない作品だったように思う。まあ、それが角川映画なのだから仕方のないところだが、それでも、赤川次郎原作、崔洋一監督の角川映画『いつか誰かが殺される』にしたって、もっと見所があったはずである。
しかし、室田日出男菅原文太が出ているというのは見所といえば見所かもしれない。また、その原作の世界観の的確な再現を志向するということで言えば、確かにその通りだと思う反面、あまりにも過剰な側面があったように思う。永島敏行と原田知世が最初に出会うシーンの執拗なカットバック、マルガリータや水割りを作るところを丹念に追い、その後も反復させるというあたり。あるいは、暴力描写やカーチェイスのいくらなんでも長すぎるだろうと思われる描写の執拗さ。
それらはいったい何だったのか…と考えると、角川映画を撮ることへのささやかな批評性だったのかもしれない。当時、崔洋一が映画を撮る状況を知らないぼくには手に余るが、映画の中身云々よりも、角川映画周辺について考えることの方が大事なのかもしれない。次回に期待。