ジャズ批評家から出発

tido2004-04-10

大橋巨泉自伝『ゲバゲバ70年!』を読み終える。当初、70年代についての本なのかと思って勘違いしていたが、単に大橋巨泉の70年の生涯を綴るものだった。本屋で見かけたときに、テリー伊藤の70年代本が近くにあったから早とちりしたのかもしれない。
ゴルフ三昧のセミ・リタイア前後よりも、面白いのはやはり戦後からジャズ批評家、放送作家を経てタレントに転身する時期であり、テレビ黎明期の試行錯誤がひしひしと伝わってくる。数え切れないほどの登場人物が大橋巨泉に関係し、テレビに情熱を注ぐ。ラジオ中心の時代からテレビ中心の時代へ。
クイズダービー』といえば、ぼくも子供の頃に観ていたし、『世界まるごとHOWマッチ』やその後の『ギミア・ぶれいく』『巨泉の使えない英語』を観ていた記憶もあるが、『11PM』や『巨泉のワールドスターゴルフ』や『巨泉のこんなモノいらない!?』などを無性に観たいと思った。『11PM』とは、ぼくの時代からすると『EXテレビ』や『トゥナイト』に相当するんだろうか。
この本の厚さは足立正生の『映画/革命』と同じく、しかし違った文脈で時代の証言となっていて、ぼくにとってはなかなか楽しめる内容だった。途中で触れる人物の中に、石原裕次郎もいて、もしかしたら勝新との交流もあるのでは…と思ったけど一言も触れられず。当時の永六輔王貞治ビートたけしについては、もっと詳細に触れて欲しかった。大橋巨泉の語り口にはあまり大きな迂回はないのだけれど、散漫気味に小さな迂回をたくさんしているのがよかった。藤圭子について触れているところもある。

たしか土曜夜の生放送で、初めは『ヤングタウン赤坂』といったが、人気が出て幅を広げるため、赤坂を東京に直した。第一回、途中でスタジオを出たボクは、向かいのホテル・ニュージャパンに行った。そこでギターを弾きながら唄っていたのが、デビュー早々の藤圭子であった。「十五、十六、十七と私の人生暗かった」と無表情に唄うこの娘の顔を見ながら、これは売れるナとボクは思った。七〇年安保に敗れた若者たちの気持ちをぴったり表していたからである。