1週間ぶり

バイトと大学に追われた先週はまったく映画を観る暇もなく終わってしまった。それを反省して、今日は借りていたビデオを観た。といっても、今日が返却期限だったのに4本中2本しか観ることができなかったが…。
今日の画像にも使っているのは加戸敏監督『怪猫逢魔が辻』である。入江たか子主演はもちろん、勝新もそこそこの役で出演している。傑作だった。江戸時代の舞台役者として活躍している入江たか子の芝居だけでも観る価値が十分にある。女ばかりの一座の頂点に立つ彼女を妬んで、このシリーズの定番=女の妬みが炸裂する。罠に陥れ、あからさまにいじめ、入江たか子の顔面に毒を塗り込みお岩さんのようなありさまにしたかと思えば、女弟子を殺害し、男を使って彼女自身も殺害しようとする。愛していた男に殺される入江たか子は化け猫となる。しかも一瞬で。殺されてから化け猫になるまでのブランクがないのだ。刀で斬られ、湖に沈められたかと思えば、すぐさま化け猫として這い上がってくるのだ。
80数分ある本作では、じわじわ化け猫の恐怖を見せてくれる。最初はオーソドックスな出現だけで人々をおののかせるのだが、やがては身を躍らせながら戦い、『怪猫有馬御殿』同様に、「化け猫の戯れ」をやって見せる。おどろおどろしい音にコミカルなタッチの三味線の音が重なったかと思えば、手を丸めて招き猫の仕草をし始める。そうすると、化け猫の獲物は、身の自由を奪われ、前転や後転や宙返りをさせられるのだ。『怪猫有馬御殿』では化け猫となった入江たか子の無表情の戯れこそが画面上で冴え渡っていたが、『怪猫逢魔が辻』ではお岩さんのような醜い顔に加えて、激しい形相が過剰すぎて、独特の魅力を削いでしまっている感はあるが、それでも十分に面白い。
さらに西村昭五郎監督『残酷 おんな情死』。真里アンヌはやはり70年代的な女優だ。梶芽衣子のイメージと無意識に比較して見ていたが、確かに「どこにもいけない」という自己の虚数化が働いているように見える。ただし、レズパートナーとして愛し合うようになる相手の大堀早苗は、ゴーゴークラブ大好きで「なんか面白いことない?」が口癖のやはり「どこにもいけない」という気分の持ち主であり、彼女と情交を重ねることで、真里アンヌ自身は空間の虚数化を遂げるのだった。すなわち、前半は『女囚さそり』で後半は『ジーンズブルース』の梶芽衣子なのだ。しかし、全体としては中途半端な印象を受ける映画だった。男の描写が不徹底でもある。底を流れている気分が好きなだけにもったいない。久しぶりに若松孝二×足立正生の映画が観たくなった。