反発→シラけ→情念

石井輝男監督、梶芽衣子主演、1970年の『怪談昇り竜』をビデオで観た。
いろいろな要素が詰め込まれていて整理が難しい映画だった。女囚、女親分、見世物小屋、せむし男(土方巽が演じている)、めくらの刺客、女同士の対決…とおどろおどろしい要素がめまぐるしく展開するわ、語り口は突飛だわで、嵐のような内容である。しかしそうは言っても、ぎりぎりのところでひとつにまとまっていて、漠然とした印象では勝新の「かみそり半蔵シリーズ」を観た感じに近いような気がした。時代劇でありながら、軽々しく飄々としている部分がそういった印象につながるのだろう。
梶芽衣子に関してはオーソドックスな芝居に落ち着いていると思ったが、それはそれでこの映画にぴったりな感じではあった。梶芽衣子は70年代が進行していく過程で疾走を強めるのであり、70年の本作はいわば起点に近い辺りに位置しているのだろう。
ところで、先日古本屋で購入した『日本映画俳優全史 女優編』をめくっていて、梶芽衣子の項目を見つけたので読んでみた。

…この頃(※70年代半ば)、彼女の眼は妖しく輝いていた。(中略)五十一年の「やくざの墓場・くちなしの花」(深作)では渡哲也扮する刑事と恋をする朝鮮とのハーフのやくざの情婦に扮し、差別された日蔭の女の暗く絶望的な情念を演じこなし、なんともみごとであった。さらにこれから大女優としての成長が期待できる逸材と言えよう。

77年に現代教養文庫で発行されているみたいだから、その少し前の状況を評したものだと思われる。