キューティーハニー前夜祭@新宿ミラノ座

<上映作品>

夜勤バイトの後、すぐに大学に行って2コマこなして家に帰って1時間仮眠をとって新宿歌舞伎町へ。コマ劇前に設置された巨大な「トロイの木馬」を横目に開場を待つ。11時半開場。1000人収容のミラノ座が満席になる。
キューティーハニー』は掛け値なしに面白かった。あえて選択した統一感のなさがむしろ満腹感を高めてくれる。特にパンサークロー四天王の役作りのすごいこと。あの個性的な悪役たちは、この作品の意図を完璧に理解しているに違いない。片桐はいり小日向しえ新谷真弓もミッチーも素晴らしい生き様を見せてくれた。手塚とおるもさすがだった。もちろん、愛の戦士側だって魅力的で、思わず微笑ましくなる場面の連続は冒頭から結末まで衰えることがない。やっぱり出演していた永井豪はお約束。
そういえば、トークショーでも触れていたけど、この後で観ることとなったDAICON FILM版『帰ってきたウルトラマン』の結末は、『キューティーハニー』の結末とほとんど同じであり、庵野監督が良い意味でのアマチュア精神を存分に発揮しているということがはっきりとうかがえる。トークショーには、安野モヨコも駆けつけていたのだが、彼女を前にして庵野秀明は『エヴァ』以降の精神状態を切り開いてくれたのは安野モヨコの漫画であり作風なのだときっぱり言い切っていた。この実写版『キューティーハニー』は『ハッピーマニア』でもあるのだ…と。
キューティーハニー』のプロトタイプとなった『流星課長』も笑えたし、他の庵野秀明実写作品にしても作家的な一貫性は保ちつつ、しだいにやりたいことが素直にできるような状態/状況に落ち着いていく様子が見られる。もう『エヴァ』のようなアニメが作られることはないだろう。それは監督にとっても観客にとっても幸福なことだと思いたい。
それにしても『キューティーハニー』を観ている時の昂揚は、映画の終わりと共に消え失せ、大学の事情などを考慮して最後の『式日』を観ずに映画観を後にする頃にはむしろ苦痛になっているのに気づいた。ぼくはこういうタイプの作品の場合、作品世界にどっぷり浸ってしまった分だけ、後々どうにもやりきれない気分ばかりが残ってしまう。対象との距離が測れてないのだろう。そういう意味でも、『キューティーハニー』は久しぶりに純粋に楽しめるものだった。