ひとりだけの上映会

荻窪のアール・コリンに行くのは久しぶりだった。前日徹夜、そのまま大学に行って、家に帰って仮眠をとり、夜7時に当地へ。今までも2、3人ぐらいが相場だったけど、今夜の観客はぼくひとりだけだった。

前者に関しては言うまでもなし。アール・コリンのフィルム上映でも繰り返し観た。*1
プドフキンは初めて観る。エイゼンシュテインと一緒に名前を見聞きするぐらいといった予備知識。しかし…これは衝撃だった。『アジアの嵐』は面白い!広大な自然でのロケーション。モンゴル民族(?)、ラマ僧パルチザンなどの身体は、意外にも組織化されているように感じられず、生活感を滲ませる様子であり、なおかつ芝居じみてもいない。確かにエイゼンシュテインと似たようなカッティングは見られるが、明らかに違いも見られる。この映画だけの印象では言い切れないが、革命後の1927年の映画ということを差し引いても、注目すべき点に溢れている。
チンギス・ハーンの末裔が、ロシア兵によって利用される辺りは、サミュエル・フラーの『最前線物語』の結末を思わせないでもなく、彼が傀儡として仕立て上げられ、上流階級のおもちゃよろしく扱われる描写などは、滑稽とも不気味ともつかない奇妙なバランスに貫かれ、やがて動物的な本能からか、かつての記憶を取り戻し暴発する場面では、サイレント映画とはいえ圧倒的な迫力だった。
ひとりだけのために上映してくれる何とも贅沢な一時。場所的にはそんなに良いわけじゃないけど…。

*1:プログラムの組み合わせ次第で、他の観ていない映画と一緒に上映されることが多いので、繰り返し観るはめになる。