あの頃に夢見たもの

昨夜、近所のスーパー銭湯お風呂の王様のサウナにあるテレビにて「黒バラ」の冒頭だけ観て、ヤンキーファッションの特集をやっていてそれほど遠すぎない昔に思いを馳せた。中学時代、ぼくも中井君と同様、中ラン派だった。裏地はパープルで裏ボタンは竜の絵柄のものだった。財布にもびっしりと裏ボタンを装着するのが流行りだった。首のカラーを外した中ランを素肌の上にそのまま着て、ツータックのボンタンをはき、極限まで細くした学生鞄か何も入っていないスポーツバッグで学校へ。額と眉毛の剃り込みも欠かせない。思えば、これまでのぼくの人生で最もファッションというものに情熱を注いだ時期だった。
当時の仲間でヤクザや職人という典型的な道へと行った者もいるだろうが、ほとんどは普通の社会人かフリーターだ。やはり学生服というものに独自のフェティシズムが宿るのだろう。ブレザーになった高校時代は周囲も含めて逸脱した服装はそれほどなかった。それでもささやかにタックの入ったズボンをはいたりしたが、県内にそういったものを扱う店もほとんどなかったし、たったそれだけのことでバカみたいに時間をかけて緩い説教されたりするので、気合いが空回りするといった感があるのを否めなかった。
今はさすがに流行っていないとは思ったけど、つい先日地元に帰った時、近所の商店街にあるヤンキーファッション専門の小さな服屋が未だ健在であったので、どうやらこの希少な文明は生きているらしい。自分たちの時のことを考えると、学校の雰囲気というのもあったけど、『ろくでなしブルース』とか『カメレオン』とかの影響があったのを思い出せる。実際、ボクシングがやりたくなって、小6の時、有志の仲間5人ほどでボクシング部をつくり、毎朝4時〜6時半頃までと、学校の終った夕方〜夜までトレーニングに励んでいた。といっても、朝はとにかく全力で走りまくって、死にそうに疲れた頃、近所の自販機でみんなの金でエロ本を買い、上半身裸で朝日を浴びながらエロ本の回し読みをするという内容だったし、夕方は、精神修業といって墓荒しをしたり山の上にある地蔵を落としたり「ライオンの親子」*1をやったりするという内容だった。まあしかし、今考えると『ろくでなしブルース』はうちの母親も読んでいて健全なマンガだったと言えるが、『カメレオン』に関して思い出せるのは、椎名の兄が姉(きれいなニューハーフ)だったということであり、なぜ主人公が彼女を拒絶するのか意味不明だったということである。ああいった何かを隠蔽したマンガというのは、人の成(性)長を後々歪めてしまうのだろう。

*1:急斜面からわざと突き落とされる修業。