完膚なきまでの整合性

渋谷ユーロスペースにて。4時台の回、立ち見がでるほどの盛況ぶり。
冒頭10分ほどでこれは死ぬほど退屈な映画なのではないか……という危惧が生まれ、ある程度までそれは正しかったのだが、緻密に設計された物語の伏線が整合していく半ばから後半の執拗なまでの展開は痛快だった。
妻に逃げられた冴えない男が会ったばかりの女にそっと抱きしめられるシーンが最初の方にある。映画の終わりの方で、違う人物の視点からそのシーンが再び反復されるのだが、観客は最初のシーンを知っているだけにこの時のカットが絶妙に笑いを誘う。この映画は、視点を変えての反復がなされ始めてから急激に面白くなるのだ。最初に『パルプ・フィクション』を観た時のような衝撃まではいかないが、脚本の緻密さをすべて笑いに結びつけている技には舌をまく。視点となるそれぞれの人物造形もいい。恐るべし低予算映画。