もうひとつのポルノ産業

  • ハードコア・デイズ(監督:リチャード・グラツァー&ワッシュ・ウエスト、出演:スコット・ガーニィ、マイケル・クーニョetc)

ブギーナイツ』のゲイバージョンというコピーが付されていた。確かにゲイポルノ業界を描いたものではあるが、『ブギーナイツ』とは対照的にかなり寂れた雰囲気である。最初から隆盛しているとはいえないがさらに退廃に向う。
強引なズーム、乱暴な編集に乱暴な展開。ついでに音楽もおかしい。前半はそういった要素が目立つが、ずっと見ていると乱暴ではあるが淡々としている展開に慣れてしまう。しかし、ゲイポルノ業界を描いたというものより、3人ほどの人物の内面と関係にほとんど焦点が絞られていて、業界への視線までには広がらない。それはちょっともったいないと思った。普通に描くだけでも面白そうな業界なのに、ある殺人事件が起こってからの後半は話が変な方向へそれてゆく。まあ、それはそれで面白いのかもしれないが。三者三様のロードムービー?……などと思ったところで映画は中途半端に終わってしまうのだった。
さて日本のゲイ業界といえば、ちょうど松倉すみ歩著『ウリ専!』(英知出版)を読んだところ。

ウリ専!♂が♂にカラダを売る仕事

ウリ専!♂が♂にカラダを売る仕事

ちょっとしたブームなのかこういった「ウリ専」本の類をけっこう本屋でも見かける。芝居にもなった。*1いくつか読んだ中ではけっこう細かく内実を綴っている。インタビューを中心にした構成に、筆者が考察を加えた形である。多少、物語化っぽいところも見られるけど、概して客観的な視点で綴っていると思う。名前からすると女性なのだろう。しかし、経歴もよく分からず、私情も挟んでないので、むしろこの筆者のことが気になった。最後のページには「筆者がこの世界を追い始めたのは今から4年前、22歳の頃からだ」とあり、また「筆者が何故、この世界に固執したのか。その説明は別の機会に譲るとして(後略)」とも書かれてある。次作を待つしかない。
大雑把に見ればウリ専をやる人たちのパターンはいくつかに分けられそうだし、特殊というわけでもない。内面に迫ってみるとどうか? ひとりひとり動機や考え方が違うのは当たり前だが、それでもああそんなもんかという感想にとどまる場合がほとんどであり、やっぱり特殊なことではないようである。中にはかなり変わった動機や考え方でこの世界を渡り歩く者もいるようだが……。ぼくも20歳ぐらいの時にそういうバイトをやっていた。視野を広げたり、金を稼いだりするには良いと思う。ただし、視野を狭め、金遣いを荒くする可能性も同じぐらいある。ニートがやってみればいいんじゃないかな。適当だけど。