回胴式人間模様

tido2006-04-24

回胴人間模様ベストセレクション (白夜ムック240)

回胴人間模様ベストセレクション (白夜ムック240)

『月刊パチスロ必勝ガイドMAX』の連載をまとめて加筆したものである。朝からイベント狙いで並んでいた時はパチスロ雑誌を数冊買って読みあさってテンションを上げていたので、およそどの雑誌も目を通したことがあるが、一通り読むとやはりつまらないものの方が多い。データや情報重視のファン雑誌ならまだ良いが、マンガとなると本当にくだらないものもある。そういう過程を経て「パニック」系のマンガ*1は今でも欠かさず読んでいる。アニマルかつみによる本書にも「パニック」のレギュラーメンバーである名波誠やグラサン師匠が対談相手として登場する。『実録鬼嫁日記』のカズマ氏*2も登場する。しかし、この本の一番の読みどころは芥川賞作家金原ひとみとの対談だろう。
村上龍的なものだったり、ハンス・ベルメール的なものだったり、身体観みたいなものに少なからず共感を抱いていたが、やはりパチスロの手練でもあった。彼女は高校を半年でドロップアウトした後、彼氏を介してパチスロにはまる。この対談でも「イプシロン*3」やら「サンダーV」やら「クランキーコンドル」やら往年の名機*4の名が出てくる。これらの機種は「純Aタイプ」で「技術介入」が要求されるゲーム性の高い人気機種だ。今の機種と違ってシビアな目押し力が勝敗に大きくかかわってる。それでも射幸性はあまり高くない。数千円〜一万円そこそこで遊べる機種なのだ。
金原ひとみもそのような機種に夢中になり、ぎりぎりの生活の中でパチスロ謳歌していたようだ。女性ならではの体験だろうけど、店内の煽りマイクで「オオハナビ」のビタハズシを冷やかされたりしたエピソードなどを語っていた。アニマルかつみの「パチスロ小説を書いてくれ」という提案に「やりたい」と答えていたことだし、スロッターならではの小説を書いてほしいものである。
ところで、そんな名機たちの時代……往年といってもそれほど昔のことではない。次のランキングは99年度のパチスロ人気機種ベスト10である。

  1. 花火(アルゼ)
  2. アレックス(アルゼ)
  3. 花月(山佐)
  4. サンダーV(アルゼ)
  5. アステカ(エレコ)
  6. ビーマックス(アルゼ)
  7. バーサス(アルゼ)
  8. 次郎吉(アルゼ)
  9. クランキーコンドル(アルゼ)
  10. ニューパルサー(山佐)

一目見て分かる通り「アルゼ」の機種がほとんどを占めている。先日アルゼにまつわる話をちょっと聞く機会があったので、興味のままに本などを読み始めた。例えば、この本など。

アルゼ王国はスキャンダルの総合商社―続・アルゼ王国の闇

アルゼ王国はスキャンダルの総合商社―続・アルゼ王国の闇

アルゼに真っ向から立ち向かうのは鹿砦社の本ぐらいのようであり、このシリーズは内容に重複している部分もあるが、持続的に取材してくれているおかげで「アルゼ史」のおおよそをある程度つかむことができた。というのも、パチスロ遊技者からすれば、上のランキングからもうかがえるように名機をたくさん世に放った偉大なメーカーという認識が先に立ち、その「黒い霧」など知るはずもないか興味の範囲に入ってこない。確かに「ミリオンゴッド」云々の功罪*5が語られたり、最近のキャラクターに頼った*6ゲーム性に劣る機種の連発が問題視されたりすることはある。しかし、それでも「ハナビ」「オオハナ*7」などのドンスロの魅力などはパチスロの魅力そのものでもあるし、先ほども挙がった「サンダーV」の多彩な告知、リーチ目などの魅力に触れるとパチスロの虜になってしまうだろう。
しかし、99年に長者番付1位にもなった*8アルゼグループ社長(現オーナー)=岡田和生の歴史を見ると様々な疑惑が見えてくる。いや、疑惑どころかあからさまなものまである。アメリカのカジノ業界とのつながり、あまりに独善的な社内政治、双子の弟の服毒自殺、亀井静香との金にまみれた関係、脱税、他メーカーへの強引な手段、K-1とのつながり……挙げればきりがない。パチスロのファン雑誌はメーカーからの情報提供に基づいているため、批判的な記事は掲載できないし、ファンも汚れた話が知りたいわけではないだろう。ただし、末井昭という例外が編集局長をつとめる白夜書房は批判的な記事も載せたらしいが。
アルゼに代表されるメーカー、一部は朝鮮系団体やヤグザ業界とのつながりもあるだろうホールや、利権に溺れた警察などが絡み、複雑怪奇な疑似カジノのようなシステムが公然と運営されているというわけである。また、溝口敦が『パチンコ「30兆円の闇」』で取り上げている3店方式なども問題視されない方がおかしい。これは猥褻概念にも言えることだが、法律でパチンコ&パチスロなどのギャンブルを公認してグレーゾーンをなくすべきだろう。結局、私服を肥やすのは上に挙げた連中ばかりで、その金はすべてパチンコ&パチスロファンから出されているに他ならないのだから。ファンはホールに搾取され、出版社に搾取され、ホールや出版社はメーカーに搾取され、メーカーは警察や政治家と黒い関係を結び……その他もろもろ。
しかし、何て面白いのだろうか、この業界は。今日も会社帰りに2万円ほど負けてしまい、2度とスロットなど打つか!と思いはしたのだが、今は給料が入ってどの機種を打つべきか考え中である。

*1:ぼくはとりわけサマンサ三吉のマンガが好きなのだが、一般的にはあかつきけいいちの「アドリブ」シリーズや名波誠の「旅打ち」シリーズが人気だと思われる。

*2:カズマ氏のパチスロ日記はあまり面白いと思わない。パチンコからパチスロへ転身したid:takuzouさんの日記の方が面白い。

*3:ボトムズ』じゃなくて……

*4:「サンダーV」や「クランキーコンドル」はしかるべきホールを探せばまだ打つことは可能だろう。ぼくの家の近所でも「サンダーV」は現役高稼働中。

*5:いわゆる「爆裂機の規制」のきっかけのひとつとして。

*6:サクラ大戦』『デビルマン』『キュ−ティーハニー』など。

*7:パチスロ好きの「オオハナ」への思いを知るには、このフラッシュを見てもらうのが一番。泣ける……http://www1.ocn.ne.jp/%7Eslot777/oohanabi.htm

*8:http://www.hyou.net/ka/nouzeibanduke.htm