信念を生きる

佐藤慶演じる大尉の前、村松英子演じる女スパイに正体を詰め寄る市川雷蔵。緊迫感のある良い場面だけど、台詞が惜しい。「おい、楳香」と始まる啖呵に易々と正体を明かしてしまう。せっかく市川雷蔵の味のある関西弁などがあるというのに、もっと見せ場をしっかりして欲しいと思ってしまう。
近所のビデオ屋に昔の映画が置いてあって、しかもビデオは1本100円でレンタルできて嬉しい限りなのだが、こういったシリーズものは全部揃っていなくて1、2本欠けていたりするのがもどかしい。
スロ漫画雑誌「パニック7」が発売されていたのでコンビ二で立ち読み(今月は余分な金がない)してきたら、サマンサ三吉が親父の死をネタにしていて、ちょうど先ほど観た『陸軍中野学校 雲一号指令』で市川雷蔵が母の危篤を告げられながらも彼は「ミヨシジロウではなくシイナジロウ」だから見舞いに行かないのだが、その信念と同様のものに思えた。不謹慎と見る人もいるかもしれないけど、サマンサ三吉のそれはスタイルを貫くという信念であり、スロ漫画という不毛なジャンルの中でもちゃんとネタを考え、意識を保ち続けるということの実践なのである。
ところで、せっかくスロ関係の仕事もやっているのだからと、先日初めてスロVシネに手を出してみた。白夜書房の漫画を原作にしているもので『ワイルド・タッチ』というちょっと前のやつ。「花火」をネタにしている。競争意識が弱いためにリストラにあった若者(主演の松田ケイジは痩せた飯野賢治といった感じ)が、ふらっと立ち寄ったパチスロ店(なぜか渋谷マルハン)でスロプロの老人に会い、惚れ込み、最後に乗り越えるという内容。そこに同棲していた彼女との結婚までの道のりというサイドストーリーが加わる。上流階級のお嬢様である彼女の親に反対されながらも最後はパチスロで認められるという(笑)な話である。
他人を蹴落としてまで仕事で勝ち抜きたくないという主人公の意識、パチスロを釣りに重ね、表面に見えないところに隠されているものがあるという「思想」……ぼくも陥ってしまったパチスロに意義を見出す王道パターンを見せられるのは気恥ずかしい感じ。こういうジャンルがVシネになるというのはやっぱり需要があるんだろうなぁ。もっと面白いものがあるかもしれないから、もう少し手を出してみようと思う。