ガメラの化身
- 作者: 唐沢俊一
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/04/14
- メディア: 単行本
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次の部分は特に面白かったところで、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』について場面ごとに監督が解説しているという設定である。そこでこんな話が飛び出す。
唐沢 ところで、この宇宙人の中に、『大魔神』の中に入った方(橋本氏)がいらっしゃると聞いておりますが……。
湯浅 あの、一番背の高い人ですね。もとオリオンズのセンターをやっていた男です。木村恵吾監督が菅原謙二主演で『一刀斎は背番号6』という作品を撮ったとき、僕はサード助監督についてたんですが、打った球をランニングキャッチするシーンがあって、彼にやってもらった。で、球を取って、地面を転がるんですが、そこでボキッ、と鎖骨を折ってしまった。選手生命はもうアウトです。それで、大映が気の毒に思って、役者さんとして彼を入れたんです。第二の人生ですね。わたしはその映画で、春川ますみさんが風呂へ入るシーンの湯気を立てたことを覚えているな(笑)。パンツはいたまま風呂へ入ろうとするので、
「そりゃまずいでしょう」
って言ったら、
「あら、そう」
ってパッとその場で脱いじゃった。驚きましたねえ。後年、「何たって18歳」に出てもらったとき、その話をしたら笑ってましたけどね。……いや、話がつい、ガメラからずれました(笑)。
こんな脱線話が面白い。かといってガメラシリーズについての話が面白くないわけではなく、単なる技術論や蘊蓄にとどまらず、当時の大映の人間模様やら湯浅監督のポジティブで力強い性格やらガメラに関わった人たちの多様なあり様がうかがえてとてつもなく面白いのである。さらに川島雄三や衣笠貞之助から受け継いだ演出について語っているところもあり、とにかく充実した映画本に仕上がっていると思う。
というわけで、まずこの本を読んでガメラシリーズを観るというのもありだろう。