曇ったピンク色

tido2006-06-12

紅薔薇座の衝撃を引きずってしまっている。このところ何をしても(借金をしても)揺らがなかった精神状態が揺さぶられている。昨日もほとんど睡眠がとれなくて仕事中も睡魔に襲われ続けていたけど、仕事が終わると新宿のタワレコへと急いだ。紅薔薇座のゆあ&京によるショーで用いられた曲を探すためだ。はてなで質問をしたり、音楽に詳しい友だちに訊いてみたり、ネットで調べたりしているけど、やはり断片的な記憶しかないためになかなか発見できない。
それで、タワレコで片っ端からジャケットを見れば、該当の曲を見つけたらピンと来るんじゃないだろうかと無謀な挑戦を試みたわけだが、やはりそう簡単に見つかるわけもなかった。店員さんにも訊いてみた。分かる範囲で曲の感じを説明したら、どこかで聴いたんですか?と訊ね返されたので恥を忍んでストリップ劇場で聴きました、とわざわざ答えたが、曲名かアーティスト名かレーベルなどが分からないと検索自体が不可能だった。
もやもやとした気分のまま南口から東口の辺りを歩いているといつものコース。新宿国際名画座に足が向く。あっ、この前ポレポレ東中野で観た堀禎二の『草叢』が上映されている。ピンク劇場用のタイトルだったがすぐに分かる。疲労と徒労で眠かったし、あまり気が進まなかったが、暗闇の中に足は自然と向くのだった。

  • 不倫団地 かなしいイロやねん(監督/脚本:堀禎二、出演:速水今日子、吉岡睦雄、伊藤猛、森田リコ、佐々木ユメカ、マメ山田etc)
  • ハマッた人妻 絶頂(監督/脚本:深町章、出演:福永悦子etc)
  • 熟女・人妻狩り(監督:池島ゆたか、脚本:五代暁子、出演:三上夕希、佐々木麻由子、日高ゆりあ、竹本泰志etc)

上映時間のぎりぎりまで近くのスロット店でも立ち寄ってみようと、7枚交換のボッタクリ店を覗いてみると、何かの罠だろうか、南国育ちが792Gで放置されていた。仮天井の997Gまで6、7千円といったところ。BIGを引くか、蝶が飛ぶかすれば余裕でプラスになる。で、回し始めると1G目で鳴ってREG。そのコインで再びREG。すべて呑まれて終わり。調子が悪い時はとことん調子が悪いようだ。時間つぶしにはなったが……。
さてそろそろ『不倫団地〜』が始まる頃だなと思って扉を開けると、すでに15分ほど過ぎたあたりの場面だった。新宿のピンク劇場の上映スケジュールは相変わらず信用できない。
『不倫団地〜』こと『草叢』が傑作であることには変わりがないが、今の精神状態で観るとかなり気分が荒廃してしまった。吉岡睦雄の台詞のように、自分がゴミのように思えて仕方がない。こういう時にはいつもとは逆に『ハマッた人妻 絶頂』のようにバカエロ路線の方が気分に合う。つまらないのは確かだが、どれを観ても安定しているのは深町章の作風。ピンク映画にエロを求める人のニーズに最も忠実に答えているのかもしれない。
意外に良かったのは池島ゆたか監督の『熟女・人妻狩り』だった。これはちょっと前に観た、同じく池島作品の『肉体秘書 パンスト濡らして』のシリーズだった。五代暁子の脚本ということ、存在感の弱い弁護士と元恋人の女探偵という脇役の存在も通じる。そしてサイコものであるという点も同じだ。低予算のピンクにしてはかなり娯楽的要素を詰め込んでいて飽きさせない。遊び心でサイレント劇を挿入する辺りはさすが池島ゆたかと思わされた。ホラー描写もなかなか鋭く、一瞬ぞっとする場面もあった。
加えて、今年のピンク大賞林由美香の後という難しい状況で、プレゼンターを務めた日高ゆりあを観てみたいという目的もあった。冒頭でいきなり殺されてしまうが、その死様など気合いの入った表情で存在感を出していた。会話部分の演技力はちょっと危うかったけど、これからピンク映画を彩る女優として期待できそうである。
ピンク映画に慰撫されてささやかな幸福は味わえたにせよ、当分の間は先日のストリップショーの記憶を引きずってしまいそうだ。