天涯孤独少女

最近、秘宝を見つけた。といってもパチスロのことだ。吉宗も南国育ちも北斗の拳もなくなってしまって、もう時代は終わるなとちょっと前まで思っていたけど、「手軽に遊べるパチンコ・パチスロ展示会」にもあった大都のジイサマーや5号機で万枚の夢を見せてくれるスパイダーマン、そして最後の4号機たちを見るにつけて、まだ時代は終わっていないと思わせられた。特に、秘宝伝。これはやればやるほど面白い。俺の空にしても、最初の印象は最悪だったけど、あとあと面白さが分かってきたし、けっこう勝たせてもらった。だけど、秘宝伝は面白さに加えて、設定看破の醍醐味もあるし、最近はまさに秘宝=パラダイスホールを見つけたので、連戦連勝、当分は楽しみつつ臨時収入を得ることができそうだ。
違った。そんな話をしたいんじゃなかった。最近は映画を見るペースがかなり落ちてしまっている。『LOFT』や『紀子の食卓』や『レディ・イン・ザ・ウォーター』や『ブラック・ダリア』ぐらいは見たけど、東京国際映画祭にはまったく行けそうにないし、ミニシアター系や特集上映などにも疎くなってしまっている。今日、新宿のピンク映画のラインナップをチェックしたので藤原健一や国沢実や田尻裕司あたりの作品は観ておきたいけど……
仕事の後の居酒屋バイトが夜8、9時〜朝4、5時まであるので、すっかり出不精になってしまっている。そのせいもあって、ここ数年は一部を除いてまったく観ていなかったAVを観るようになった。ちょうど安田理央雨宮まみの『エロの敵』を読んだところでもある。お気に入りはSODブランドのナチュラルハイ。露出シリーズは良かった。紋舞らんの『プチ裸出』はシリーズ中ではややソフトな内容ながら、人の良い彼女の魅力が発揮されていたと思う。全般的にAVを観ているわけじゃないこともあって、ぼくはAV女優といったら紋舞らんにしか今は興味がない。それほど好きでもある。何年か前に『あややっちゃおうかな〜』を観たときは別に興味を抱かなかったのに……なぜだろうか。
そんなわけでレンタルショップの新作コーナーに出ていた『紋舞らんinワンダーランド』を観た。泣いてしまった。これは最高傑作かもしれない。天涯孤独少女紋舞らんが慕う往年の巨根男優マグナム北斗が大阪の街を案内する。そんなほのぼのした幕開け。しかし、最初に取材のインタビューをしてくれる人がいるからと引き合わされた汗だくの中年おじさんは変態M男。「こんなおじさんどう?」と言って唐突にズボンとパンツを下ろすと、赤いストッキングに勃起した男根。悲鳴をあげて驚く紋舞らん。でも、人の良い彼女だから状況にたじろぎつつも、おじさんの変態要求にちゃんと応える。
そんな「淫タビュー」が終わり、次にビデオショップへ。ここでマグナム北斗は紋舞らんのビデオをしっかり売ってくれている店長にお礼をしてあげなさいと事務所でフェラ指令。店長にフェラしてあげていると、次々と闖入者が入ってきて結局3人の精液を浴びることに。予想外の事態にとまどいながらも嫌がらずに奉仕する紋舞らん
次に紹介されたのはひとりの女性と2匹の犬。マグナム北斗は、彼女は業界でナンバーワンになりたいらしいから、ナンバーワンになったらんちゃんから秘訣を教えてあげなさいと指令。謙遜しながらも、自分なりに努力したことはあるから「いいですよ」と引き受ける紋舞らん。一行は彼女のアパートへ。ここで展開されるのは女とその彼氏、犬2匹を交えた乱交。この不思議に平和な光景。興味津々で嬉しそうに参加する紋舞らん。マンコもチンポもペロペロ舐める2匹のパグ。この場面で唯一ネガティヴな反応をするのは案内者のマグナム北斗である。犬嫌いなのだ。
大阪を後にして後半は東京へ。60歳のソープ嬢にテクニックを教わる紋舞らん。加えて、花岡じったによって客側の視点からソープ嬢の心得をみっちり叩き込まれる。この実践教習において、お客さん役の花岡じったよりも感じ過ぎてしまって乱れてしまい、「まあそれもいいんですけどね」とちょっとだけ注意される紋舞らんは可愛い。この後のフィナーレは感動的である。ここで画面が暗転し、テロップが入る。

今回、なぜ彼女がソープ嬢になるのか?
それには理由があった

そして画面には新宿東口のホームレス鈴木さんが登場。6ヶ月風呂に入っていない。そしてテロップが続く。

ホームレスを風呂に入れる
実はこれが今回の最終目的なのだ
AVアイドルの中でそれができるのは彼女しかいない
誰もが「いい子」と評する彼女はその提案を快諾してくれた
「あ、いいですよ」の一言で

そして最終章が始まる。天涯孤独少女と過去を捨てた推定55歳のホームレス。生々しい空気が流れる中、鈴木さんの緊張をしだいに和らげてゆく紋舞らんソープ嬢。過去を閉ざしたホームレスにする質問として妥当とは思えない「鈴木さん、普段お休みの日は何してるんですか?」「どうして髭を伸ばしてるんですか?お髭が好きなんですか?」みたいなものも、彼女があの表情、口調で発すると空気が和らぐのが分かる。キスがしにくいからといって気を遣いながら髭をそってあげる紋舞らん
ローションプレイでの奉仕もむなしく、反応のない鈴木さんのペニス。紋舞らんは、マジックミラー号で終電間近のファンをいかせられなくて泣いてしまう長瀬愛とは違って、すごく楽しそうな表情で直前に教わったテクニックを総動員しながら鈴木さんに奉仕する。そして奇跡が訪れる。この場面はさりげない編集ではあるが、3つの反復が結実する場面であり、感動なしで観られない。
なぜなら、まず60歳のソープ嬢にテクニックを教わる際、「おまんた」についてのためになる話がある。曰く、ストリップの好きなお客さんは女の子のあそこ自体が好きだけど、そうじゃないお客さんもいる、そういうことを会話の中から盗むのよ、と。この知識が花岡じったとの実践教習でまず反復される。どうされるのが好きかと問われる鈴木さんはことごとく特にないと、やはり自分を曝け出したりしない。しかし、様々なテクニックを総動員した後、件の反復が行われるのだ。
「鈴木さん、ストリップは好きですか?」
「うん、好きですね」
鈴木さんの答えを聞いて心底嬉しそうにする紋舞らん
「じゃあ、おまんこ好きですか?」
うなずく鈴木さん。
「見るの大丈夫ですか?」
うなずく鈴木さん。
「私の見てもらっていいですか?」
「はい」
シックスナインの体勢になった途端、鈴木さんは「もしかして舐めちゃっていいの?」と言って急に活力を取り戻したかのように変貌し、激しい舌遣いになり、玉が張り、勃起する。ちゃんと花岡じったの教訓を守って、自分が感じるより鈴木さんのことを考えてフェラする紋舞らん。そしてあっという間に鈴木さんは数年ぶり、あるいはもしかすると数十年ぶりの射精。
エピローグ。新宿駅前にて鈴木さん。どうでしたか?という問いかけに……
「初めてでびっくりしちゃったよ……ふつうだったらこんな汚い格好して嫌がると思うんだけどね。可愛かったですね」
そう言って重そうな荷物をたくさん手に提げて新宿の街へと消えてゆく。
エンドロールで裸の鈴木さんと紋舞らんがカメラに向ってあややポーズをするあたりも素晴らしかった。すごいのを観たなぁと余韻に浸ろうと思ったら編集ペヤングマキ、監督バクシーシ山下と最後にクレジットされて、なるほどなぁと思った。