佐川急便のバイトの実態

以前の職場では毎日毎日ずっとパソコンに向き合う仕事だったため、たまには肉体労働もいいだろうと思っていたので、ちょうど金がなくなったこともあり、派遣会社を通して佐川急便の夜勤バイトを始めた。先週から。
大学時代に様々なバイトをやっていて、きついバイトと楽なバイトの情報をいろいろと耳に挟んだりしていたが、その中でも佐川はきついというのは頻繁に聞いていた。ビックカメラも厳しいと聞いたことがあって、これも派遣で一度やったことがあるのだけれど、確かにハードだった。労働時間の長さ、休憩時間の短さ、精神的なプレッシャー。給料的にはまずまずだったが、長く続けたくないバイトだった。
しかし、今回やり始めた佐川急便の夜勤バイトはそれとは比較できないほど厳しい。営業所によって多少の違いはあるらしいが、ぼくが働く千代田店では平日夜7時、土曜日夜6時から始まり、終了がだいたい朝7時半〜8時半ぐらいで、約13時間という長時間労働である。しかも、決まった休憩は食事休憩の40分〜1時間のみ。それ以外は座ることさえできず、常に何らかの労働に従事しなくてはならない。
基本的に社員はドライバーの人だけで、下ろした荷物を仕分けするのはほとんどバイトである。5〜8社ぐらいの派遣会社から派遣されたバイトがそれぞれの作業に従事する。荷下ろし、荷引き、小物、粗小物、貴重品など、いろいろと担当があるのだが、楽な作業はあまりない。たとえ軽作業であっても、中腰姿勢のまま4〜5時間同じ作業をしなくてはならず、身体への負担は大きい。特に、荷下ろしはトラックからドライバーの人がレールに流した荷物を、レールに接続したベルトコンベアーの上に勢いよく流す作業なのだが、荷物の種類によって手前のベルトコンベアーと奥のベルトコンベアーを使い分けねばならず、奥の方まで荷物を流す時はかなり力が必要になる重労働である。さらに、ひっきりなしにトラックから荷物が流れてくるため、瞬時に手前と奥の判断をしつつ、休む暇なく流し続けねばならない。判断を間違えようものなら、ベテランに怒鳴られ、かつ気性の荒いドライバーに恫喝される。(佐川のドライバーはだいたい「〜しろ」「〜やれ」の命令口調で、どんな時間でも異常なほどハイテンションである。)
連日働くとともに、よくもこんなにハードな仕事を続けることができるなと思うのだが、ほとんどのバイトが週6出勤で数ヶ月〜数年、中には10年も継続してやっているというのに驚く。しかし逆をいえば、大多数の人が初日、1週間でやめてしまうようだ。だから、残っている人を基準にして考えると、自分がダメな人間のように思えてしまうのだが、実際にはそういう人たちは連日のハードな勤務を耐え、かなり鍛錬を積んでいるので、まったく労働の体感が違うのである。ぼくもかつて野球部とか陸上部のしごきを体験してきたが、このバイトのハードさはそれらをも遥かに凌ぐ。そういう点においては、体力づくりには向いている。もっとも、休憩の少なさや負担の大きすぎる荷物のせいで、身体を壊す可能性の方が高いのだが……
今考えると、初日に派遣会社の人に「怪我だけには気をつけて」と言われて、ちゃんとバイトのことを考えてくれているのだなぁと思ったが、おそらくそれは故障者が出ると人員調整がやっかいなだけなのだろう。その後、面接の時にすでに伝えてあった休みの確認をしたら「そんなの言ってたか? 困るなぁ。こっちが(佐川に)頭下げなきゃなんねぇんだからな」と、まったく印象の違う返答ぶりで、逆に合点がいったのであった。そもそも労働基準法に反しているのだし、こんな条件の仕事、誰だって好き好んでやりたくないだろう。
よっぽど良い時給じゃないと納得いくはずもないが、支払われるのは時給にしてたかが1000円程度。時間が長いから日給としては多く感じたけど、帰って寝るぐらいしかできないし、起きたらすぐに仕事の時間だし、どう考えても納得がいかない。だけど、よく問題になっている地方の請負の仕事みたいに、なかなかやめづらいシステムになっている。……というか、そういうシステムづくりに派遣会社=佐川急便が励んでいるのだろう。最初に契約した期間に満たずにやめると時給が最低賃金で換算されてしまうことになっている。そんな条件に法的な拘束力はないのかもしれないが、面接時に同意書みたいなのを書かされるので、心理的に文句は言えなくなるのだ。そういえば、ぼくが前にいた会社では、入社時に「いつ解雇されても文句は言いません」みたいな趣旨が書かれた同意書にサインさせられた。(その会社は気まぐれ社長のワンマン会社で社長に意見したりしたら即解雇が言い渡されたりしたのだ。)
プロ野球の投球フォーム問題がよく取り上げられているが、理不尽なルールに従わなければいけないことが多い昨今の状況は本当におかしい。だからといってそのルールを悪用できる側になって「勝者」を気取りたくない。何事に対しても動機付けを奪うような状況はどうにかならないものか。
ところで、久しぶりにはてな散策をやっていたら佐川急便に書いている人もいて、興味深く読んでいた。オペレーターの対応の悪さとかは、確かに利用者側だった時にぼくもよく感じた。しっかり伝えた内容がドライバーに伝わらなかったりすることはよくある。あと、荷物が破損していたりすることへの苦情を訴えている人もいたが、これに対しては内実を開示しておこう。あくまでぼくの働いた経験から言えることだが、実際に荷物はかなり乱暴に扱われている。扱っているのはバイトだし、あまりにも大量な荷物を少ない人員で仕分けるため、余裕というものが一切ない。だから、荷物はバシバシ投げまくってます。また、上から重い荷物を投げ入れたりするので、それに潰されることも多々ある。破損しても後で担当者が破損届けみたいなものを記入するだけなんで、お咎めどころかまったく罪悪感も生じないシステムになっているのだ。というわけで、壊れやすい物や貴重な物はなるべく任せない方が賢明である。ただし、貴重品扱いにすると大事に扱われるみたいなので良いかもしれない。普通の小包とかで送るのなら、どんなに厚く梱包しても危ないと思われる。